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1両は今のいくらか

本日は、過去の小林一郎会長のブログから転載してお伝えします。

 

1両は今のいくらか

小林一郎


 1両は今のいくらに当たるか、ということがしばしば話題になります。これは大変にやっかいな問題で、たやすくは答えられません。


 今、手元にある高校生用の資料集を調べてみると(やや古いのですが)、1両は

  A社 100800円、 B社 62000円、 C社 57800円

となっていました。どうしてこんなにも違うのでしょうか。


 まず、1両といっても時代によって価値が違うという問題があります。ことに幕末にはインフレが進行し、1両の価値は大きく下落しました。いつの時代の1両なのか、はっきりさせなければなりません。


 次に、江戸時代と現代とでは、どんなものが高価でどんなものが安価かという、物価の体系が違うのです。たとえば、現代は人件費が高額ですが、江戸時代の人件費はごく安かったのです。あまり良い例ではありませんが、小林一茶は「木がらしや二十四文の遊女小屋」と詠んでいます。下級の遊女は24文だったのです。


 逆に江戸時代に高価だったのは、衣類です。ですから「身ぐるみ脱いで置いてゆけ」と言って衣類をはぎ取る、追いはぎという犯罪がありました。現在はよほどのブランド物でないかぎり、着ている衣服に価値はありません。


 結局、物価の体系が違うので、比較する物によって1両の価値はまったく違ってしまうのです。そこで昔から、米価によって比較するという方法が試みられてきました。しかしこれにも問題があります。昔の米価は安定しておらず、大きく変動していましたし、現在の米価はあまりに米の種類が多すぎて、どの米を用いて比較したらよいのか分かりません。こう考えてくると、1両は今のいくらだなどと軽々しく言えないことが分かります。


 あるところで講演した時、この話をしたところ、「で、結局先生は1両をいくらだとお考えですか」と質問されてしまいました。


 最初に戻りますと、D社の資料集には、「『今のお金にしていくら』とは容易に答えられない。」と書いてありました。これが正解でしょう。「どうしても1両の金額を教えろ」という方には、「1両はざっと10万円」と答えることにしています。まったく根拠はないのですが。

 

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