先日、岡山県浅口市の寺院、圓珠院に伝わる人魚のミイラが話題になりました。
研究者がきちんと分析した結果、上半身は猿、下半身は魚のものを使い、人の手によって作られたものであることがわかったそうです。
さて、人魚の肉を食べると不老長寿になるという話がありますが、それに関する伝説が善光寺門前町にもあるのをご存じでしょうか。
昔、備中の国浅口郡(現在の岡山県倉敷あたり)の男が善光寺参りにやってきたところ、故郷の備中の話をしている尼に出会います。
その尼こそ人魚の肉を食べて不老長寿になった千年比丘尼で、備中を出て全国をさまよった末、善光寺如来に救いを求め、この地に住み着いたということでした。
故郷に戻った男はその話を人々に語り、今でもこの伝説は岡山県に伝えられています。
ところで、先ほどのNHKの人魚のミイラの記事。
つくりものでもそこに寄せられた人々の思いは本物であり、住職はこれからも人魚のミイラを大切に守り伝えていきたいと語っていました。
それを受け、記者のこのような言葉でまとめられています。
「今の時代、あるかないか、本物かにせものかと二元的に考えがちですが、そこにあてはまらない、よく分からないものがあってもいいのだと改めて思いました。
そして私も、それをおもしろがる気持ちも忘れずにいたいと思いました」
それは伝説に関しても同じだと思います。
今回の伝説は、小林一郎『門前町伝説案内』(龍鳳書房)によりました。
このような、善光寺門前町に関する伝説が40話収録されていますので、ぜひ読んでみてください。